延楽

樹齢400余年の檜が香しい檜風呂は、〈延楽〉ならではの豪華な優雅さに溢れている。宮大工の匠の技が光る美しい造形、透明度が非常に高い宇奈月温泉の名湯に包まれる至福の時を過ごすことができるだろう。目の前に広がる、四季折々の見事な絶景は幻想的、大自然の織りなす絵画である
宇奈月温泉の歴史を開いた料理人
濱田竹次郎の精神を受け継ぐ名旅館
大正12年。まだ名も知れぬ温泉地だった宇奈月温泉の渓谷美に魅せられ、料理旅館を興した希代の料理人がいた。ご紹介する〈延楽〉の創業初代・濱田竹次郎氏である。
明治気質で頑固者。日本の持つ和の良さにとことんこだわり、富山の本物を味わっていただきたいとの想いを宿した料理は徐々に評判を集め、文人墨客をはじめ皇室の方々が足をお運びになるまでに。まさに、宇奈月温泉の名を全国へと知らしめた立役者といっても過言ではないだろう。
宇奈月温泉の創成期から、現在に至るまで、地域に寄り添う同宿は、創業から一世紀近い時を経た今もなお、創業初代の志が「竹次郎スピリット」として料理やおもてなしに受け継がれている。竹次郎氏の料理人の志を礎に、天然のいけす・富山湾で獲れた新鮮な魚を厳選し、調味料を最小限にとどめ素材の味を最大限に引き出す料理は、ここ〈延楽〉の真骨頂。手間と時間を惜しまず一番美味しく調理され、吟味された器に盛り込まれた料理は、目に美しく舌を大いに喜ばせてくれるのである。
また、同宿は、温泉自慢の宿でもある。宮大工の手による樹齢400年の檜風呂をはじめ、露天風呂と大浴場がそれぞれ男女別に用意され、浴槽をこんこんと満たす名湯に、日頃の疲れもきっとほどけてゆくことだろう。いずれの浴場からも竹次郎氏がこよなく愛した渓谷美を望む絶景に心を奪われる。
館内には、静謐で凛とした風格が漂い、初代が集めた骨董品のコレクションの一部や逗留した文人墨客の作品が配されているので、お時間が許す限りどうぞゆっくりと御覧いただきたい。純和風の設えは、昭和世代の方にはどこかしら懐かしく、若い世代の方には目に新鮮に映ることだろう。美酒・美食、そして名湯。これからも受け継いでいきたい日本の旅の神髄がここにある。

美肌効果が高いとされる宇奈月温泉の透明度は国内有数。目の前に広がる渓谷が湯舟に映り込む様は、翡翠を思わせる美しさ。風の音、せせらぎ、鳥の声といった自然に身をゆだね、最高のひと時をゆっくりとお過ごしいただける

雅膳・のどくろの煮物。料理長の目利きと伝統を受けつぐ技に舌鼓。山菜、白エビ、ホタルイカ等、海の幸、山の幸の旬を堪能しよう

新館の「対峰閣」。延楽を常宿とし、洋画家、美術家、歌人、随筆家として活躍した中一政が名付けたもの。氏のしたためた「対峰閣」の墨蹟も館内に残されている。窓の外には渓谷が広がり、歴史を受け継ぐ和の佇まいに心が深く癒される

黒部川のせせらぎが耳に涼しく、秋の対峰閣は紅葉の極み

川合玉堂の書。“対峰閣”と名づけたのは、延楽を愛した芸術家・中山政一対氏。書は氏によるもので希少価値あり

活蟹を懐石で贅沢にいただく“焼本津合(すわい)蟹”

赤だし、越中田舎味噌等、椀物にも繊細な気づかいが感じられる
店舗情報
延楽
住所 | 富山県黒部市宇奈月温泉347-1 |
電話番号 | 0765-62-1211 |
宿泊料金 | 2名様の場合 1名様 27,000円〜 (対峰閣 1泊2食付き、税別) |
定休日 | 不定期で休館日有り |
ホームページ | https://www.enraku.com/ |