鮨こいづみ

隈研吾氏が手掛けた弧を描く白木のカウンターが印象的な店内は、9席のみのVIP空間だ。やわらかな照明に浮かび上がる美空間はシンプルでありながら、細部に至るまで考え抜かれて設計されており、小泉氏の鮨と料理に通じるものがある
江戸前鮨の魅力を五感で堪能
VIP空間で味わう匠の鮨
ご紹介する〈鮨 こいづみ〉の大将・小泉英樹氏は東京生まれ、神田鎌倉河岸で育った生粋の江戸っ子だ。鮨職人歴47年。文久元年創業の本格江戸前鮨店九段下の寿司政で研鑽を積み、横浜駅に隣接するモダンなビルの1階に暖簾を上げたのが2023年4月のこと。満を持しての出店を待ち焦がれた贔屓も数多く、大将が握る鮨を求めて東京から横浜へと足繁く通うファンも珍しくない。
お品書きはいたってシンプルで、つまみと握りをバランスの良く配したおまかせの一本のみの潔さ。「さあ、次はどんな料理で目と舌を愉しませてくれるのだろう…」と、あれこれ思いを巡らせながら、ソムリエ選りすぐりワインや日本酒で喉を潤す時間は、まさに大人の特権、至福である。
ネタは豊洲をはじめ金沢から直送される鮮度抜群の旬の魚介を中心に。口の中でほろりとほどける酢飯は、少し硬めに炊き上げる。そこに合わせるまろやかな赤酢と塩とのバランスも絶妙だ。本格江戸前鮨店の技法を受け継ぐ技が活きる「こはだ」、絶妙な火加減で仕上げられた「穴子」をはじめ、締めの干瓢巻きに至るまで、江戸前の粋を感じる逸品揃い。握る所作の美しさ、包丁の冴えにも思わず視線が吸い寄せられる。
また、鮨の腕前は言うまでもなく、〈鮨 こいづみ〉はその空間も魅力の一つ。無駄を削ぎ落した凛とした佇まいの店内は、世界的にその名を知られる名建築家・隈研吾氏の手によるもので、ここはまさに大人のための隠れ家だ。大切な方とのお食事や記念日のご利用、大事な接待等、ここ一番のシーンに申し分ない舞台となってくれることだろう。
江戸前鮨は東京で。そんな通念を覆し、東京から横浜への流れを作る名店が、またひとつ。洒脱な会話と粋な酒、極上のつまみと鮨—江戸前握りの神髄を是非味わっていただきたい。

赤酢で整えたシャリ、煮切り醤油等、江戸前鮨の技法を伝える職人技が活きる握りの数々。

時計まわりにおまかせ握りの一例から、江戸前の伝統技法である漬け込みを施した「煮はまぐり」

とろける味わいと柔らかさを愉しむ「中トロ」

個室カウンター壁面の黒い和紙から漏れ出る薄明かりに浮き出る白木カウンター。日本人の美意識の根底を感じる静謐な空間だ。大切な人との食事や接待など落ち着いた雰囲気の中で贅沢な時間を過ごす

大将・小泉氏の流れるような所作はまるで舞台を観るような感動体験をもたらしてくれる
店舗情報
鮨こいづみ
住所 | 神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町1-7-1 デリス横浜ビル1F |
電話番号 | 045-620-2606 |
営業時間 | 17:30〜23:00 (L.O.22:00) |
平均予算 | 28,000円 |
定休日 | 日曜日・年末年始 |
ホームページ | http://www.sushi-koizumi.jp/ |