新型コロナ感染拡大を受け、いまだにオンライン授業だけという進学塾は珍しくない。都内の中学受験塾代表・矢野耕平さんは「同業者は『この自粛期間にトップ層は学力を相当伸ばせたはずだ』と話している。トップ層はオンライン授業でも大丈夫だが、そうした生徒は全体の1割未満だろう」という——。
自宅でオンラインレッスンを受ける笑顔の男子生徒
写真=iStock.com/allensima
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オンライン授業に耐えられず、親子げんかが勃発

過日、ひとりの小学生保護者がわたしの塾に「転塾」の相談にやってきた。

「いま通っている塾はコロナ感染予防のため、夏いっぱいまでZoomを用いたオンライン授業しかおこなわないので、親としてもう耐えられないと思い、こうして面談をお願いした次第です」

開口一番、こんな悩みをわたしに打ち明けた。わたしの塾は6月よりライブ授業、つまりコロナ以前の集団授業を再開している。いったいその保護者は何が「耐えられない」のか。話を伺うと、オンライン授業には次のような問題点があるという。

1:オンライン授業だと子どもの集中力が続かず、学力を伸ばせそうにない。
2:リモートワークで自宅にいることが多くなった両親は、子の学習の様子が目に入る機会が多くなり、1のような子の学習状況にいら立ってしまう。
3:子に注意を与えると「逆ギレ」されてしまい、親子で大げんかになってしまう。

実はこの手の相談はレアなものではない。6月に入ってからわたしの塾に問い合わせてくる複数の小学生保護者が同じような悩みを口にするのだ。

オンライン授業では子どもの学力を伸ばせないのか

それでは、オンライン授業では子どもの学力を伸ばせないのだろうか。

結論から申し上げよう。「伸ばせない」は、半分は正解で、半分は間違いである。

とある大手塾で最難関校を狙う中学受験生たちを専門に指導をしている知り合いの講師は、わたしとの電話でこんなことを言っていた。

「中学受験生のトップ層は、この自粛期間は学力を相当伸ばせたにちがいない。Zoomでの反応も上々だし、彼ら彼女たちにとって『学びの足かせ』になっている小学校がないのだから。朝から晩までずっと勉強しているよ」

中学受験の学習内容は、公立小学校の授業内容とはレベルが異なる。そのため学校での授業は優秀な受験生にとって「進度が遅すぎる」と考える塾講師は少なくない。個人的には小学校を「学びの足かせ」と言い切るのは短見であり、乱暴な物言いだと思う。いずれにせよ、中学受験生の優秀層にとってはライブ授業であってもオンライン授業であっても受験勉強を進める上で何も問題はないということは真実なのだろう。

ただし、わたしの「感覚値」としては、こうした優秀層は全体の1割もいない。

残りの大多数の中学受験生は、ライブ授業からオンライン授業の切り替えについていけず、思い通りにカリキュラムを消化できずに四苦八苦しているように見える。

そして、その原因はオンライン授業を「発信する側」「受信する側」双方に認められるのだ。