塗り工房ふじい

伝統とテクノロジーの融合から生まれた
世界初のガラス漆器
ご紹介する〈塗り工房ふじい〉が工房を構える和歌山県海南市は、太平洋に面した海辺の町。温暖な気候と、漆の硬化に必要な適当な湿度を擁することから、古来より漆器の産地として栄え、山中塗り・会津塗りと共に日本三大漆器の一つに数えられる紀州漆器の名産地だ。
〈塗り工房ふじい〉は、この紀州漆器の核となる黒江地区にあり、400年以上の長きにわたり受け継がれてきた「黒江塗り」の伝統技法を使い、世界初となる「ガラス漆器」を手掛ける工房である。まずこの美しい写真をご覧いただきたい。幾重にも塗り重ねることで生まれる、奥行のある深く引き込まれるような色合いは、他の塗装では表現できない漆だけのもの。そこにガラスの透明性が加わり、想像力を刺激される、稀有なプロダクトとなっている。
工房を主宰する藤井嘉彦氏は、家業の漆器業の修行のため、中東・アメリカ・ヨーロッパなどを見聞し、漆器製品の輸出や、百貨店での展示などを手掛けていた。やがて、漆塗りの技法をインテリアへ繋げたいとの想いから、2001年に同工房を立ち上げ、ガラスに漆を定着させるという独自技術の開発に成功する。その技法は、ガラス食器の裏面から漆を塗り、漆工芸技法の一つである「蒔絵」を施してゆくというもの。フォークやナイフを使う食器には不向きとされた漆塗りだったが、ガラス食器に漆塗りの奥深さを表現する革命的な器が完成した。現在これらの食器は料理を格上げする器として、著名なホテルやレストランなどで採用されている。漆塗りを施した裏面もしっかりとコーディングされており食洗器にも対応する。また、この技法は器以外にも、グラスやプレート、カトラリーの柄、タイルやパネル、テーブルなどのインテリア類まで、ガラスと漆の融合が次々と新しい製品をつくり出している。
紀州漆器の伝統である黒江塗りをバックグラウンドにした新しい漆塗りの世界を、ぜひ身近な空間に取り入れてみてはいかがだろう。





店舗情報
塗り工房ふじい
住所 | 和歌山県海南市名高532-4 |
電話番号 | 073-483-0323 |
営業時間 | 9:30~17:00 |
定休日 | 土曜日、日曜日、祝日 |
ホームページ | http://www.nuri-koubou.com |