地名の通り名から「並木」と「八山田」。この名前にピンときた方は、ご案内する〈らん亭〉——「割烹 らん亭」（並木）・「らん亭〜美日庵」（八山田）の暖簾をくぐったことのある方であろう。
包丁を握るのは、京都祇園で修業を積んだ亭主・五十嵐公緒氏。隣町・須賀川で「亀蜂」の屋号で割烹を興した曽祖父から数えて4代目。曽祖父の先代も料理屋を営んでいたというから、100年を超える歴史を5代目としてその腕に擁す。
酒や箸の進み具合を見極めながら、次の料理を絶妙のタイミングで供する「喰いきり」を旨とし、会席料理の流れに沿いながらも主の感性が冴えるおまかせ料理は、日々全力投球が身上だ。
淡路、若狭、庄内、別府、青森、長崎…。数え上げたらきりがない。日本全国、その時々の一期一会の旬の素材を吟味して仕入れ、地元郡山や会津地方で手塩にかけて育てられた有機野菜もふんだんに。とかく季節感が希薄になった昨今にあって、ここ〈らん亭〉の料理には、瑞々しい旬の奔り、勢いがみなぎる旬の盛り、そして季節を惜しむ旬の名残がある。供される器や盛り込みの美しさも、ぜひお愉しみいただきたい。
完全予約制にてお客様をお迎えするのは、「割烹 らん亭」。原則として一日一客。、門をくぐると、そこは別世界。純和風の空間で、時を忘れ、非日常の世界を味わっていただける。ワイン、そして酒処福島ならではの美酒も豊富に揃っているので、大切な方を伴って、ぜひ一献。
さあ、同じ献立・素材であっても必ずどこかを変えるという亭主の包丁が、今宵も冴える。一人ひとりのゲストにとって、そして地域にとっても唯一無二。そんな直球勝負の割烹である。
