港から山の手に延びる北野坂のビルに〈北野坂 螢〉のあかりが灯る。さて、今日はどんな天ぷらを食べさせてくれるのだろう…と思いを巡らす。カウンター席に腰を下ろせば、スタートは先付けの椀物から。暑い日は汗が引く一杯を、息が白く凍る日にはほっこり温かく。その気配りが何とも嬉しいのである。
あえてカウンター席8席のみのご用意としたのは、お客様一人ひとりに十分目端が利くようにとの思いから。お品書きは天ぷらを組み込んだコースのみ。海と山に恵まれた兵庫の食材をはじめ、四季折々の旬の味覚を厳選し、夏は鱧、秋は松茸、冬にはふぐ、さらには神戸牛といった極上の素材も贅沢に。一番美味しく天ぷらをお召し上がりいただけるようにと、会席仕立ての多彩なコースが組み立てられている。
同店の店主は、有名料理店やホテルで和食の修業も重ねた腕利きの料理人。天ぷらばかりが続くと口が飽きる。そこで、まずは椀で助走をつけ、天ぷらと天ぷらの間に、温物をはさんだり、天ぷらの後に強肴や小鍋を配したり。その塩梅が何とも絶妙だ。
また、もう少しお腹に入れたい。あるいは少しばかり飲み足りない…。そんなときには目の前の店主に遠慮なくお声がけを。腹具合に合わせたおすすめの一品や、お食事に合わせたお酒を見繕ってくれる。こういうやり取りもまた、カウンター席の愉しさでもある。
ご夫婦で、友人と、大切な方を伴って。少人数なら女子会も。時には一人も良いものだ。アルコールの品揃えも和洋豊富で、通が「おっ」と思う銘柄も揃っているので、ゆっくりと一献傾けたい日にもおすすめだ。
