奇跡の醤 株式会社 八木澤商店

奇跡の醤ひしお
株式会社 八木澤商店

震災を乗り越えた軌跡の醤油
陸前高田の伝統の味は消えない

　文化4年（1807年）、岩手県陸前高田市に八木澤酒造として創業、大正時代には醤油製造を兼業し、昭和35年（1960年）に「株式会社八木澤商店」となる。昭和57年（1982年）からは、醤油を加工した調味料の製造販売を開始し、現在はポン酢やドレッシングなどの調味料のほか、味噌を使ったスイーツの製造販売も行っている。

　ご紹介している〈奇跡の醤〉は、天然醸造でつくられる同店の看板商品。天然醸造とは人為的に温度の管理をすることなく、自然の力だけで醗酵と熟成させる醸造方法だ。〈奇跡の醤〉は、東北の厳しい夏を2度経過させ、ゆっくりと熟成させて製造されている。熟成期間が増すことで塩の角が取れ、まろやかで口あたりの良い醤油本来のふくよかな味と香りに仕上がる。その奥深い味は、さまざまな料理や素材の味を引き立ててくれる。

　この〈奇跡の醤〉には、八木澤商店の軌跡が詰まっている。平成23年（2011年）3月11日に発生した東日本大震災により、蔵・製造工場・店舗が全壊流失。そんな災害の中でも再建に向けて早くに動き出した同社は、一関市へ移り業務を行うが、平成24年10月はに本社兼店舗を陸前高田へ戻し営業を再開、11月には一関市に建設した自社製造工場が竣工し、その4ヶ月後には商品の製造を開始。新たに進み始めた平成26年11月、震災前に微生物研究のため、水産技術センターへ預けていた同社の“もろみ”が奇跡的に見つかり、そのもろみを培養し、震災から3年8ヶ月後、〈奇跡の醤〉として最初の一滴が絞られた。200年以上愛され続け、全国醤油品評会でも3度農林水産大臣賞を受賞した醤油の復活である。

　2021年震災から10年、全てが復興しているとは言えないが、八木澤商店は〈奇跡の醤〉と共に、地域の振興に向けて歩み続けてゆく。陸前高田の伝統の味は消えない。

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