榮太樓總本鋪

写真は「梅ぼ志飴」。三角形の角が丸くなっているのは、切り口で口中を傷つけない配慮と、飴の欠けを防ぐ工夫。噛んでも歯につかず、幾つ舐めても口内が荒れない。梅ぼ志飴を唇に塗ってから口紅をつけると口唇が荒れず紅に照りが出ると、明治・大正の頃、上方の芸妓・舞妓たちが東京土産に求めたという
古いもの、新しいものが共存
昔懐かしく、そして新しい菓子
江戸時代、日本橋の魚河岸に集まる人々の人気といえば、病身の父を助ける孝行息子・栄太郎の焼く大きな金鍔。この小さな屋台は日本橋の一角に暖簾を構えることとなり、自身の幼名にちなんだ“榮太樓”を屋号に据える。それがご紹介する〈榮太樓總本鋪〉の成り立ちである。
2018年で創業200年を迎えた同店の店先には、江戸時代のままの「名代金鍔」が、約170年という年月を経てなお、その製法を変えずに並ぶ。伝統を守り続ける一方で、江戸の庶民には高価だった南蛮渡来の菓子・有平糖をもっと気軽にと、創意工夫から誕生した「梅ぼ志飴」、日本初の甘納豆「甘名納糖」、世界初となるわさび菓子「玉だれ」等、同店の歴史は、常に新しいものを生み出そうとする職人たちの挑戦の歴史でもある。
洒落好きの江戸っ子たちが名付け親の「梅ぼ志飴」が水飴と砂糖と水のみで作られた江戸時代の製法を受け継ぐ一方で、黒飴、抹茶飴、紅茶飴が考案され、平成には、のど飴とフルーツキャンディ「果汁飴」、現在では最新の飴ワールドを展開するブランド「Ameya Eitaro」も展開する等、古き良き江戸の味と、常に新しい味覚を求めて挑戦を続ける〈榮太樓總本鋪〉の精神を、榮太樓飴からもうかがい知ることができる。
紺藍地に屋号が白抜きされた暖簾が印象的な日本橋本店は、喫茶室も併設され、甘味や出来立ての生菓子をお愉しみいただける。飴、生菓子、半生、焼菓子、みつ豆、米菓等を扱い、「温故知新」を尊ぶ社風から、製造現場では最新機械だけでなく昔ながらの技術、設備も今なお現役で稼働している。
江戸と現代。古き良き、そして常に新しい〈榮太樓總本鋪〉のお菓子を、ぜひ一度。
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写真は定番の人気商品「名代金鍔」。箔のように薄く伸ばした小麦生地で、コクのある甘みが特徴の小豆餡を包み、丸く成型したものをごま油で香ばしく焼く製法は江戸からのもの。季節の旬の食材を使って餡に創意工夫を凝らした限定商品も人気だ。2週間ほど日持ちがするのも嬉しい限り
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上の写真は現在の日本橋本店内観。下の写真は明治時代に描かれた製造場略図。この絵に描かれた製法が、今なお現役で使用されている。古いものと新しいもの、その双方の良き部分が共存する。それが〈榮太樓總本鋪〉なのである
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店舗情報
日本橋本店
住所 | 東京都中央区日本橋1-2-5 |
電話番号 | 03-3271-7785 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
定休日 | 日曜日、祝日 |
ホームページ | https://www.eitaro.com |