La Fonte

La Fonte

響き合う銘醸地で育んだ技と日本の旬
シェフの哲学が凝縮した9品のコース料理

　予約を入れた瞬間から、歓喜のカウントダウンが始まる。松山市の中心部、大街道の喧騒を背に宵と週末の昼だけ、静かに明かりを灯す一軒の美食の聖地。完全予約制のその扉を開けば、オーナーシェフの稲田太一氏とスタッフが優しい笑顔で迎えてくれる。

　稲田氏は正統派イタリアンの名店である東京・南青山のリストランテ濱崎で確かな基礎を築いた後、渡伊。ピエモンテ州バルバレスコにあるAntinèで3年に渡ってスーシェフとして修行を積んだ。イタリア屈指の銘醸地で体得したものは、風土に根ざした食文化と素材の本質を見極め、真価を引き出す技術。2024年に帰国し、その翌年、イタリア語で「源」を意味する〈La Fonte〉をオープンさせた。

　料理は、9品のスペシャルコース。ピエモンテの郷土料理を軸に、本場イタリアの伝統が息づく逸品と手打ちパスタが供される。素材の声に耳を傾けるように創り上げられた料理は、いただく人の心に深く響く。スペシャリテは、ラビオリ。季節の食材を包んだパスタで、ピエモンテで磨いた技法と日本の旬が融合した傑作だ。料理や素材にまつわるエピソードを聞きながら選りすぐりの食材が目の前で「美食」に姿を変えるライブ感は、五感を揺さぶる。

　稲田氏自らが周った100を超えるワイナリーで丁寧に作られたイタリアワインもそろう。ペアリングを楽しみながら、一皿ごとに深まる感動の余韻をゆったりと時間をかけて味わう贅沢は、何事にも代えがたい。個室も用意されていて、人生の節目となる記念日や大切な方との忘れられない時間を過ごすのにふさわしい空間だ。

　「お客様に楽しいと思っていただけるよう、スタッフも私も空間を楽しみ、居心地の良い店を創っています」と稲田氏。その真摯な姿勢が、同店をさらに魅力あふれるものにしている。店を後にし、確かな技術と温かなホスピタリティが織りなす充実のひとときに酔いしれながら、次の訪問を心待ちにしている自分に気づくはずだ。

店舗情報

La Fonte

※平均予算は税込み金額の目安です