RITA 出水麓

RITA 出水麓

麓という薩摩藩独自の町並みを
武家屋敷に泊まりながら体験できる場所

　江戸時代の薩摩藩では外敵からの攻撃に備え、鹿児島城を中心に藩内各地に「麓（ふもと）」と呼ばれる武家屋敷群を配置し、強力な武士団を住まわせる独自の体制を整えていた。鹿児島県内にはその当時からの武家屋敷群が現在も残っている。

　ご紹介の〈RITA 出水麓（リタ いずみふもと）〉は、薩摩藩最大規模の武家屋敷群「出水麓」で、初の宿泊施設として2022年に開業。この地域で長年空き家となっていた3つの武家屋敷を改修・再生した「分散型ホテル」を展開している。

　宿の受付も備える「宮路邸」は、3棟の中で一番規模も大きく3つの客室が用意されている。朝食会場を併設する「土持邸」は2つの客室を、「加藤邸」は贅沢な一棟貸しとなっている。築100年〜120年を超える3つの棟は、長年それぞれの所有者が大切に保存してきたもの。外観はもちろん、室内も建築当時の貴重な姿が残されており、今ではほとんど見ることのない間取りに、立派な柱や梁を使った建築技法と趣ある建具などに囲まれ、あえてテレビや時計を置いていないので、日常の喧騒から離れて静かに過ごすことができる。

　夕食は、地元の食の魅力を知ってほしいという想いから地域の飲食店と連携しているので、ご紹介する飲食店での食事を、ぜひ楽しんでいただきたい。また朝食は、薩摩武士の暮らしから着想を得たモーニングプレートを用意。かつてこの地に暮らした薩摩武士たちは、自ら畑を耕しつつ、有事に備えて武芸の鍛錬を重ねる「半農半士」の生活を送っていたことにちなみ、スタッフが宮路邸の畑で育てた野菜をはじめ、出水市の特産品である卵・鶏肉・海苔、地元産の味噌やお茶など、できる限り地域の食材を使用した朝食を楽しめる。

　国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている出水麓地区には150軒ほどの武家屋敷が現存しており、薩摩藩の防衛を兼ねた石垣や生垣などを見ながらの散策もどこか非日常を感じさせてくれる。また出水市は鶴の渡来地としても知られており、毎年11月下旬から3月上旬までシベリアから1万羽以上の鶴が集まる。この鶴を見に訪れるのも楽しみの一つだろう。

　静謐たゆたう武家屋敷に泊まる。独自に整えられた町並と歴史を体験しに、どうぞあなたも。

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