価値ある上質なエッセンスを取り入れ、心豊かな人生を。

Japan Brand Collection

未確認

日本の伝統を継ぐ、創る、日本の名匠たちvol.1

更新日:

Japan Brand Collection

Japanese Meisters

Special Contents

日本の伝統を継ぐ、創る、
日本の名匠たちvol.1

〜 今回のコラム 〜

- 染色作家 奥田祐斎 -
水と火を操り、
森羅万象を布という素地に描き出す。
染色作家

奥田祐斎

〜 名匠の紹介 〜

1950年、三重県熊野市生まれ。絵画活動を経て、京都にて染色作家となる。水と火を絶妙に操り、自然との調和から生まれる「にじみ」を活かした作風で知られる。幻の染めである「黄櫨染(こうろぜん)」を現代に再現し、光によって染め色が変化する独自の染色技法「夢こうろ染(ゆめこうろぞめ)」を誕生させた。著書に「夢を染める」等他。2008年、ルーヴル宮内パリ装飾美術館にて作品展示、高い評価を得る。大覚寺、鹿島神宮といった神社にも氏が染めたタペストリーが奉納されている

春の雨が桜を散らす午後、京都嵐山の渡月橋からほど近い「嵐山祐斎亭」を訪ねました。

翠が滴るような瑞々しい林の中、風雅な冠木門にゆれる白い暖簾が来訪者を迎えてくれます。文豪・川端康成が逗留し、小説「山の音」を執筆したことでも知られる料理旅館「千鳥」を改修した同亭は、染織作家・奥田祐斎氏の工房兼サロンとして、今、新しい時を刻んでいます。

三重県は熊野の紺屋(※1)の4代目。画家としても才を発揮し、幻の染色技法とされる「黄櫨染(こうろぜん)を現代に再現した祐斎先生に、京都という土地についてのお話などを交えながら、その世界観を語っていただきました。

■計算を超越した自然の力と上手に折り合う。

 

 まず、染物に欠かせないのが「水」。この水の性質によって、染物の仕上がりは全く違うものになるんです。例えば、皆さんもよくご存じのエルメスのスカーフ。細かな図柄を精密に塗り分ける技巧は、ヨーロッパの「硬水」あってもの。逆に、日本の水はそのまま飲める澄んだ「軟水」で、独特のにじみを表現するのに適しています。そして、このにじみは100%計算通りにはいかず、偶然性も大きな魅力。

日本人は、はるか昔から、自然と折り合い良く生きてきました。四季を尊び、晴れの日は、晴天を楽しみ、雨の日は雨の音を聴く。自然をねじ伏せるのではなく、寄り添う術に長けていたんですね。ですから、僕もにじみはにじみのままに。

染物に使う水は牡蠣殻を入れた素焼きの甕で寝かせてから使っていますが、季節や天気によって、水のご機嫌はコロコロ変わる。今日は機嫌がいいねぇ、なんて、その日の水と折り合いながら、布地に刷毛を走らせる。自然と調和する作風を大切にしています。

そうそう。甕にほんのちょっと「京の名水」を足す。そうすると、料理の隠し味の如く、いい仕事をしてくれるんですよ。

■自分にしか創れない染めを!

そこから生まれた「夢こうろ染」。

 

 故郷の熊野は山深い土地。自然が豊かを通り越して、もう、すごく濃密で。身近な山や川は、食糧を得るための場でもあり、自然からの恵みを沢山もらって育ちました。熊野での記憶は、まぎれもない僕の一部。

 その熊野から京都へ来たのは、今からもう40年ほど前のことです。染織工房で職を得ましたが、正直、今で言うところの落ちこぼれではなかったか、と。染め職人が手掛けるのは、お客様のための商品であり、最高のものを提供するために、腕を磨き切磋琢磨を重ねていく。僕は画家でもあったので、そこにどうしても、「個」が入る。自分だけにしか表現できないものを染めたくなるわけです。

 僕の代表作品でもある「夢こうろ染」は、嵯峨天皇在位の平安時代以降、天皇が儀式で着用する袍(ほう)と呼ばれる上衣の色に定められた「黄櫨染(こうろぜん)」を、研究と検証を重ね現代の染料と染法で表現し、かつ、現代風にアレンジしたものです。日本の伝統文化である藍染のルーツは古代ペルシャ、黄八丈のルーツは中国にあります。けれど、日本独自の美意識と文化が発達した平安期に誕生した黄櫨染は、日本独自の染色技法です。

 天皇側近以外の目に触れることのない幻の技法。そして、天皇以外身に着けることの許されなかった色。しっとりと落ち着いた色あいが、光を当てると日本人が太陽の色とする赤に変化する、この類まれな染色技法の素晴らしさを、日本はもちろん世界へと伝えることが、ライフワークの一つとなっています。

■京都から世界へと夢こうろ染を発信。

 

 工芸品とは突き詰めれば暮らしの道具。美術品は暮らしに潤いを与えるもの。僕の手掛ける作品は、着物や寺社仏閣に奉納する幟といった伝統的なものからネクタイやスカーフといった服飾品まで様々ですが、工芸品の要素と芸術の要素が七:三ぐらいかな。作家の作品というと、はなから敬遠する方もいらっしゃいます。が、和装や染物といった分野に普段なじみのない方も、「こんな風に見なくちゃいけない」とかあまり堅苦しいことを考えずに、自然体であるがままに作品を感じてほしいです。

 これは染色に限ったことではないのですが、意外に外国人の方のほうが、自由な感覚で日本の伝統工芸を捉える部分があるようにも思います。けれど、日本人のこころの奥深い部分に、しっかりと根付いているものがある。それが形として場所として凝縮されているのが、ここ、京都。京都の水が自分自身が追求する作品に適しているのはもちろんのこと、僕が京都を離れないのは、ここには日本の美意識や精神が今もなお息づいているから。

夢こうろ染は、その日の天気や陽ざしの強さ、角度などによって、表情が刻々と変わります。それはもう、作り手を超えた自然の技。これからも、京都のこの工房から、夢こうろ染の魅力を世に広く発信し、日本人が守ってきた自然と調和する精神を次世代へと伝えていくことが、伝統を継いでいく作家としての仕事だと思っています。

工房見学のご案内

仏・ルーヴル美術館の学芸員も研修で訪れる「嵐山祐斎亭」は、完全予約制にて工房見学が可能です。染色体験も完全予約制にて対応可能なので、事前にご相談下さい。

工場情報

住所 京都市右京区嵯峨亀の尾町6
電話番号 075-881-2331

※1 染物屋のこと

-未確認

Copyright© Japan Brand Collection , 2020 All Rights Reserved Powered by STINGER.