〈御料理 久間〉がお客様をお迎えするのは、三河湾まで車で10分少々の閑静な住宅街。黒い板塀に風雅な植栽。暖簾をくぐり引き戸を開ける—と、そこに広がるのは木の香も清しい和の空間。板場に立つのは、名店として愛された父親の代のちゃんこ店を改装し、京都の和食店と炭火焼の店で修業を重ねた腕をふるう大将の久間康喜氏だ。
現しの梁やどっしりとした柱が古民家を思わせる店内には9名様が着席できる一枚板のカウンターが用意され、調理場には煉瓦造りの囲炉裏風の炭焼き台や鰹節の削り場をはじめ、奥には薪を使って火を熾す“おくどさん”がある。出汁を引く、炭火で焼く、土鍋で炊く。そんな、どこか懐かしい日本の台所の調理風景を眺めながらの酒食のひと時をゆっくりとお愉しみいただきたい。
豊橋は海が近く農業も非常に盛んな土地柄だ。この地の利を活用し、魚のほとんどが、三河湾・伊勢湾・太平洋で水揚げされたもの。仕入れる野菜は、化学肥料や薬品を使用せずに野菜づくりを手掛ける地元農家から。抗生剤など不使用の銘柄豚「保美豚」や、狩猟解禁期間中は近隣の山のジビエも加わる肉の美味しさもお墨付き。お品書きはおまかせのみで、季節を宿したこれらの旬の食材を自在に組み合わせ、ランチ・ディナー共に大将おすすめのコースでご提供。地元豊橋の小田商店の木桶の天然醸造の醤油や福建省の天日干しの塩、自家製味噌など調味料にもこだわり抜いた料理は華美に走らず潔い。さあ、今日はどんな料理が出てくるのだろう…と、いつ訪れても心がときめくこと請け合いだ。
また、同店は食事の美味しさはもちろんのこと、酒の目利きにも定評がある。店内には日本酒専用のセラーを備え、品揃えは常時50種を超える。他ではなかなか味わえない希少な銘柄のご用意もあるので、SAKE DIPLOMAの資格を擁する店主が提供するペアリングも是非お試しを。
大切な方、遠方からのお客様をお連れして、美味の宝庫・豊橋を大いに自慢したくなる店である。
