〈てんぷら 味処 司〉には四季がある。旬の奔り、盛り、そして名残り。その形を愛で舌で味わい、時にはお酒をクイっとやる—。ああ、まさに至福である。
店主の片山哲司氏は、東京の老舗天ぷら店「天松」の渋谷店にて修業を積むこと21年。独立して構えた店は今年で12年目になる。昨年5月には「天松」の長い年月を重ねてきた重厚感溢れる檜の一枚板のカウンターを譲り受け、心機一転した。毎日手入れをしより一層味わい深いカウンターが日々お客様をお出迎えしてくれる。
同店の天ぷらはさっくりと軽く仕上げる胡麻油で揚げる江戸前だ。ネタには四季折々の魚介や野菜を厳選し、江戸前天ぷらの基準を守りながらも新しい発想を取り入れた変わり種も織り交ぜていく。修業元の「天松」から特別に承諾を受けた別誂の胡麻油を卸して使っていることも特長で、旬の素材が一番美味しく揚がるように、季節に応じてブレンドするというのもこだわりだ。
ランチタイムは気軽に愉しめる天ぷら定食や丼ものを。夜にはお食事のシーンやお腹の具合に応じて選べる数種のおまかせコースのご用意があり、コースの場合は、〆には天丼か天茶漬けのどちらかを選べるのだが、いずれも甲乙つけがたく実に悩ましい。日本酒やワインもセンスを感じる銘柄が揃っているので、是非一献。
味はもちろん、万事行き届いた接客も評判なので、大切な方とのお食事や失敗できない接待にも安心してご利用を。静かにお食事を愉しみたいお客様にはほど良い距離を、お話好きなお客様にはお声掛けする気配りが実に自然だ。
「その日の素材、その日のお客様との出会い。天ぷらは全てが一期一会の一発勝負」と、片山氏。最高に美味しく召し上がっていただけるように、お酒や食事の進み具合等を見計らいながら、ベストなタイミングでお出しすることに心を配り、天ぷらの一つひとつに精魂をこめる。
本格的な江戸前天ぷらは都内に行かないと無理…と、思っていた諸氏をも納得させる名店が藤岡にあるとはうれしい限り。粋で美味しいひと時をあなたもいかが。
